特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律

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特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
通称・略称 プロバイダ責任制限法
法令番号 平成13年法律第137号
効力 現行法
種類 法律
主な内容 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任について
関連法令 電気通信事業法
条文リンク 総務省法令データ提供システム

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(とくていでんきつうしんえきむていきょうしゃのそんがいばいしょうせきにんのせいげんおよびはっしんしゃじょうほうのかいじにかんするほうりつ)平成13年11月30日法律第137号、施行2002年5月27日)は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利を定める日本法律である(同法第1条より)。 通称プロバイダ責任制限法(プロバイダせきにんせいげんほう)。

プロバイダ責任法と呼ばれることもあるが、法律の趣旨が損害賠償責任の「制限」であるため、電気通信事業者協会・テレコムサービス協会・日本インターネットプロバイダー協会は「制限」の字を入れて表記している。⇒#外部リンク

用語の定義

以下は第2条において定義されている用語である。本項目でもこれらの用語を使用している。

特定電気通信
不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法第2条第1号に規定する電気通信)の送信。具体的にはウェブサイト電子掲示板(BBS)、ウィキ(Wiki)、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などが該当する。ただし、公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信(いわゆる放送)は、放送法有線テレビジョン放送法などで規制されることから対象外とされる。電子メール等の1対1の通信は「不特定の者によって受信」にあたらず、その集合体に過ぎないメールマガジンもあたらない。
特定電気通信設備
特定電気通信の用に供される電気通信設備(電気通信事業法第2条第2号)。具体的にはWebサーバなど。
特定電気通信役務提供者
特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者。具体的にはインターネットサービスプロバイダ(ISP)の管理者や電子掲示板(BBS)の管理人など。
発信者
特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(記録された情報が不特定の者に送信されるもの)に情報を記録し、又は当該特定電気通信設備の送信装置(同じく入力された情報が不特定の者に送信されるもの)に情報を入力した者。具体的にはWebサイトで情報を発信した人や、掲示板に情報を投稿した人など。

以上より、個人でウェブサイトを作成している者は、「発信者」であり「特定電気通信役務提供者」ではないので、同法の責任の対象者ではない。しかし、電子掲示板も設置した場合には、第三者による書き込みの管理を行うことから、その限りにおいて掲示板を設置した個人(管理人)もプロバイダとともに「特定電気通信役務提供者」として、同法の責任の対象者となる(この場合、書き込みをした第三者が「発信者」にあたる)。

責任の制限される条件

特定電気通信役務提供者(以下プロバイダ等)は、次の各項目をいずれか満たした場合は賠償の責任を負う必要がない。

権利を侵害された者に発生した損害

  1. プロバイダ等自身が情報の発信者でない
  2. 情報の送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能である
  3. 権利を侵害する情報が流通していたと知らなかったか、もしくは情報の流通を知っていたが、他人の権利が侵害されたと認めるに足りる相当の理由がなかった

情報の送信を停止したことにより発信者に発生した損害

  1. 情報の送信を停止する措置が必要限度内であった
  2. その情報が他人の権利が侵害されたと認めるに足りる相当の理由があった
  3. 権利を侵害されたとする者からその理由を示して送信を停止するよう要求があり、情報発信者に送信停止の同意を求めた場合において7日以内に返答がなかった

発信者情報を公開しなかったことにより開示請求者に発生した損害

  1. プロバイダ等自身が情報の発信者でない
  2. 故意または重大な過失がなかった

ネット中傷、発信者情報を開示しなかったプロバイダーの賠償責任については限定的(2010年4月)

2ちゃんねる」への中傷書き込みをめぐり、最高裁は、書き込んだ人の情報を開示しなかったことに対するプロバイダー(接続業者)の損害賠償責任を認める範囲について「権利侵害が明白か、重大な過失がある場合に限られる」とする初判断。

プロバイダー法は、開示しなかった業者の賠償責任は、業者に「故意か重大な過失」がある場合に限定している。判決は、発信者情報の開示そのものは認めた。この情報をもとに改めて賠償を請求すれば、認められる可能性は残る。

2ちゃんねるで中傷。開示拒んだKDDIの賠償責任否定

インターネット掲示板への不快用語書き込みをめぐり、被害者側への発信者情報の開示を拒んだプロバイダーのKDDIに賠償責任があるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷は13日、賠償責任を否定する初判断を示した。

その上で、二審判決のうち、KDDIに対する15万円賠償命令を破棄。発信者の氏名や住所などを被害者側に開示するよう命じた部分については維持した。

田原睦夫裁判長は「(書き込み内容は)社会通念上許される限度を超えた侮辱であることが一見して明白ではない」と指摘した。

原告は、神奈川県小田原市の学校法人湘南ライナス学園の理事長。2008年6月の一審東京地裁判決は理事長側の請求を棄却。同12月の二審東京高裁判決は書き込まれた内容を権利侵害と認め、情報開示と賠償を命じた。

判決によると、理事長は2007年1月、掲示板「2ちゃんねる」に本人が中傷される不快な用語を書き込まれた。

ニコニコ動画に投稿された「久本雅美・頭がパーン」動画、東京地裁が創価学会の情報開示請求を認める

タレント久本雅美さんが出演するビデオを無断で「ニコニコ動画」にアップロードされ著作権を侵害されたとして、ビデオの著作権を持つ創価学会がプロバイダ責任制限法に基づいて発信者情報の開示を請求し、東京地裁がISPに対し情報開示を命じていたことが分かった。

判決は2013年10月22日付け。アップロードユーザーが利用したISPを運営するGMOインターネットに対し、動画をアップロードしたユーザーの氏名・住所、電子メールアドレスの開示を命じている。

判決によると、動画は2012年11月29日に投稿されたもので、長さは2分6秒。判決文の「対応一覧表」によると、創価学会が著作権を持つ「すばらしきわが人生 part2」のうち、「久本が創価学会の池田名誉会長から漫才を褒められて、頭がパーンとなったと話している」部分などが含まれている。いわゆるMADと呼ばれる動画の1つで、現在は視聴できない。

創価学会側は、この動画が著作権(複製権、公衆送信権)を侵害しており、損害賠償などを請求するために発信者情報の開示を受けるべき理由があると主張。東京地裁(長谷川浩二裁判長)は主張を認め、GMOインターネットに対し情報開示を命じた。

10月24日の時点で、この動画を再アップロードしたものと思われるMAD動画がニコ動で確認できる。

発信者情報の開示

権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれも該当する場合、プロバイダ等に対して保有する発信者情報の開示を請求することができる。

  1. 侵害情報の流通によって権利が侵害されたことが明らかである
  2. 発信者情報が開示請求者の損害賠償請求権の行使のために必要であるか、その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある

開示請求を受けたプロバイダ等は発信者に連絡することができないなどの事情がある場合を除き、発信者に開示するかどうかについて意見を聴かなければならない。

発信者情報は省令で以下のように定められる。省令本文はウィキソースの項目を参照のこと。

  1. 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
  2. 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
  3. 発信者の電子メールアドレス
  4. 侵害情報に係るIPアドレス
  5. 前号のIPアドレスから侵害情報が送信された年月日及び時刻

また、発信者情報の開示を受けた請求者は、発信者情報を用いて発信者の名誉や生活の平穏を不当に害してはならないと定められている。これについての罰則は定められていないが、刑法名誉毀損罪などを適用できる。

具体的な手続き例

プロバイダ責任制限法と電子掲示板

この法律の指す「権利の侵害」は大きく分けて著作権の侵害と、名誉プライバシーの侵害に分けることができる。このうち電子掲示板などで問題になるのは後者の場合が多く、2ちゃんねるなど大規模な掲示板では権利侵害に対する削除要請を処理するプロセスが作られているが、増大する権利侵害に対して十分に機能しているとは言いがたい状況がある。

特に実名報道が禁止されている少年犯罪において、加害者の氏名や住所などの個人情報と思われるものが掲載されるなどの問題では、所轄官庁である法務省の地方法務局などがそれらの情報の削除を2ちゃんねるに要請したことがある。これに対して2ちゃんねるは匿名による言論の自由を重く見る立場から、削除に関する要請を基本的に全面公開する方式をとっており、掲載情報の削除を法務局が要請することで、いくつかの問題が発生した。すなわち、

  • 削除が実際に行われるまでの間、掲載の情報が事実であるとの印象を与え、逆効果となってしまうこと
  • 一切の窓口は特設の掲示板上にあり、法務局からの要請であることが技術的に証明できなかったこと

などである。

プロバイダ責任制限法の施行に対応して、2002年2月に設置されたプロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会は同法の運用指針が定めたが、原則として権利を侵害された本人からの申し出を念頭に置いたもので、上に述べたようなケースでは、運用に限界があった。そこで同協議会はガイドラインの改訂作業を進め、法務省やその関連人権機関からの削除要請を直接プロバイダ等に対して行う際の手順を策定し、削除に応じない場合はその理由を法務省に通知するよう求めることにしている[1]。ただし、削除に法務省がより積極的に関与することで表現の自由を侵すことがないよう、ガイドラインには注意が払われており、また2ちゃんねるを始めとして、多くの重要なプロバイダ等が協議会に加盟していないことから、運用の実効性には疑問が残されている。

関連項目

外部リンク

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