失われた世代

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失われた世代(うしなわれたせだい)、ロストジェネレーション (Lost Generation)

  1. 1920年代から1930年代に活躍したアメリカ合衆国の作家の一群。広義では、欧米諸国で第一次世界大戦に遭遇して、従来の価値観に懐疑的である世代も指す。→本項で解説。
  2. 1990年代以後の南アフリカ諸国において学校教育を受けずに犯罪を繰り返す青年が社会問題となり、それらの青年を指して呼んだ。
  3. 日本就職氷河期世代(生年で見ると1977年から1982年生まれ)の別称。

文学史における失われた世代Lost Generation)とは、1920年代から1930年代に活躍したアメリカ合衆国の小説家を指す語である。広義では、欧米諸国で20代の時に第一次大戦中に遭遇して、従来の価値観に懐疑的になった世代も指す。生年で見ると、1880年代中期から1890年代までに生まれた世代(1883年 - 1900年生まれ)とされる。

概要[編集]

ヘミングウェイの息子バンビとガートルード・スタイン(1924年)

「ロストジェネレーション」という言葉は第一次大戦後の1920年代パリに滞在していたアーネスト・ヘミングウェイに対しガートルード・スタインが投げかけた台詞(You are all a lost generation. あなたたちは皆、失われた世代なのよ。)に由来し、酒や享楽に溺れる「自堕落な世代」を意味していた。ヘミングウェイがこの台詞を「日はまた昇る」のエピグラフに引用し広く知られるようになった。

第一次世界大戦後の当時、アーネスト・ヘミングウェイシャーウッド・アンダーソンジョン・ドス・パソス、画家のワルド・パースen:Waldo Peirce)、シェイクスピア書店 (Shakespeare and Company) 主のシルビア・ビーチ、詩人ではE・E・カミングスエズラ・パウンド、批評家ではマルカム・カウリーそしてスタイン自身など、パリで生活したアメリカ人の一群がいた。F・スコット・フィッツジェラルドもこの頃パリに旅行し、スタインらと交友を持った。

ヘミングウェイの「日はまた昇る」(1926年)やフィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」(1925年)などの作家はロストジェネレーションの文学と呼ばれた。延いては、文学だけでなく、「第一次大戦後に青年期を迎えたアメリカ人」も指すようになった。

「ロスト」という語は「失った」という意味を持つ一方で、「迷子の」「行き場の無い」という意味も持つ。「ロストジェネレーション」は「失われた世代」と訳されるが、「迷子世代」「迷える世代」と訳される場合もある。この世代が、第一次大戦により、旧来の価値観に対する動揺や、戦死といった災禍に襲われた経験もまた、「ロストジェネレーション」という語を生んだ背景になっている。

ヨーロッパでは、ロストジェネレーションは「1914年世代」とも呼ばれている(1914年は第一次世界大戦の始まった年)。フランスでは「炎の世代 (Génération au Feu) 」とも呼ばれている。

特徴[編集]

ロストジェネレーションの人々は、第一次大戦における大量の犠牲により、親世代が持つヴィクトリア期モラルに対して冷笑的になったとされる。また、第一次大戦に遭遇したが故に、社会と既成の価値観に絶望し、その中で生きる指針を失い、社会の中で迷った世代である。どの世代の例に漏れず、この例に該当する者と該当しない者の双方が存在した。

ロストジェネレーションは、20代の青年期を第一次大戦に蹂躙され、戦死したり、生き残ったが社会生活に支障を来たす負傷をした者も多い。40代に当たる1930年代には世界恐慌に遭遇し、50代を第二次大戦に蹂躙されるという、「貧乏くじ世代」であったとも言える。

ロストジェネレーションの子供世代はビート・ジェネレーションと呼ばれており、純粋なアメリカ文化と言われるジャズが花開いた時代(ジャズ・エイジ)に9歳までの時期を過ごしたが、10代の少年期を世界恐慌に蹂躙され、20代の青年期を第二次大戦に蹂躙されるという、これまた「貧乏くじ世代」であったとも言える。

ロストジェネレーションの人々の中には、当時のアメリカ文化がヨーロッパに存在する文明性を欠いていると考えた者もいた。彼らは「ローリング・トゥエンティーズ」と呼ばれる好景気に沸いていたアメリカを後にして、その時間の多くをヨーロッパ、中でもパリを中心に生活していた。この期間に生み出された文学作品の中に、後にアメリカ文学における傑作と目される作品も多い。

該当する人物[編集]

1883年 - 1900年生まれの人物の例を以下に挙げる。

代表的な文学作品には次のようなものが挙げられる。:

この時代に誕生したアメリカ大統領は次の2人である。

  • 1884年誕生 ハリー・S・トルーマン 任期1945年 - 1953年(1972年死去)
  • 1890年誕生 ドワイト・D・アイゼンハワー 任期1953年 - 1961年(1969年死去)

この世代に誕生した政治家は、1937年から1953年にかけて合衆国議会下院で、1943年から1959年には上院で、そして1941年から1967年まではアメリカ合衆国最高裁判所で多数派を形成した。

アメリカ人以外で、同じ時代に生まれた者[編集]

1880年代中期から1890年代まで(1883年 - 1900年)に生まれた世代は、「第一次世界大戦に遭遇した世代」でもある。日本で言えば、概ね明治10年代後半から明治20年代までの生まれ(1882年 - 1896年生まれ)がこの世代に該当する。

親世代は概ね1860年代の生まれに当たり、「自由民権運動に遭遇した世代」である。祖父母世代は概ね1830年代から1840年代の生まれであり、天保改革の最中か終結直後に生まれた世代である。曽祖父母世代は概ね1800年代 - 1830年代の生まれであり、天保騒動蛮社の獄に遭遇した世代である。

子供世代は概ね1910年代 - 1920年代の生まれに当たり、「世界恐慌第二次世界大戦に遭遇した世代」である。孫世代は概ね1940年代から1950年代の生まれであり、第二次世界大戦の最中か終結直後に生まれた世代である。曽孫世代は概ね1970年代から1980年代の生まれであり、1990年代の「アメリカナイゼーション」と呼ばれるグローバル資本主義や世界的不況に遭遇し、日本で「ロストジェネレーション」と呼ばれているプレカリアートが世界的にも多い世代である。

以下に挙げるように、この1880年代中期 - 1890年代に生まれた人々には、第二次大戦を惹き起こしたり、関与した政治家が非常に多いが、彼らの経験が第一次大戦に根ざしている事は言うまでもない。

ベニート・ムッソリーニ東條英機蒋介石チャーリー・チャップリンアドルフ・ヒトラーホー・チ・ミンシャルル・ド・ゴール近衛文麿芥川龍之介毛沢東ニキータ・フルシチョフパウロ6世ハイレ・セラシエ1世エルヴィン・ロンメルゲオルギー・ジューコフヘルマン・ゲーリング岸信介アントニオ・サラザールクヴィスリングJ・R・R・トールキンバーナード・モントゴメリールカーチ・ジェルジアントニオ・グラムシマックス・ホルクハイマーナジ・イムレヤン・マサリクジョージ6世フリッツ・ラングルイス・マウントバッテンマルク・シャガールエーリッヒ・マリア・レマルクジョアン・ミロボリス・パステルナークセルゲイ・プロコフィエフディエゴ・リベラフランツ・カフカオルダス・ハクスリー谷崎潤一郎ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインマルティン・ハイデガー和辻哲郎などである。

リンク[編集]

関連項目[編集]


南米・アフリカ・インド・イラク・フランス・オーストラリア[編集]

1990年代に、南アフリカやラテンアメリカ、インド・イラク・フランス・オーストラリアの教育を受けていないLost Generationが、武装し強盗や強姦を繰り返すことが世界的な社会問題となった。スタインが「You are all a lost generation.」と述べた時と同様に、「自堕落な世代」というニュアンスで用いられている。

  • The Politics of Education: South Africa's Lost Generation. (EJ429512) Author(s): Green, Max Source: American Enterprise, v2 n3 p12-15 May-Jun 1991
  • Children in the Streets: Latin America's Lost Generation. (EJ508908) Author(s): Rizzini, Irene; Lusk, Mark W. Source: Children and Youth Services Review, v17 n3 p391-400 1995

アフリカのLost Generation問題を捉えた映像[編集]

1990年代Lost Generationと呼ばれた若者は、働くことはせず、ドラッグに溺れ、略奪と強姦と殺人と手榴弾による爆破を繰り返し、都市はスラム化して崩壊した。崩壊した都市の中では、ヨハネスブルグが最も顕著である。国連でも課題の一つに挙げられているが、2000年以降も2011年現在に至るまで、まだ治安の改善に至っていない。

インドのLost Generation問題を捉えた映像[編集]

Unreported world india - "the broken people" part 1/3 http://jp.youtube.com/watch?v=Yc7iiFPDbDc Unreported world india - "the broken people" part 2/3 http://jp.youtube.com/watch?v=leUEtR7ZUWk 10代の子供たちの多くが犠牲となっている。

Unreported world-India Land of missing children - 1/3 http://jp.youtube.com/watch?v=N7Wm4nasexY Unreported world-India Land of missing children - 2/3 http://jp.youtube.com/watch?v=P_fT-yQ6WnE

イラクのLost Generation問題を捉えた映像[編集]

Iraq's lost generation http://jp.youtube.com/watch?v=GRA3QdvY9rQ

フランスのLost Generation問題を捉えた映像[編集]

The Lost Generation (2003) http://jp.youtube.com/watch?v=irrT2JdSHPU

  • 2009年現在、麻薬取り締まり法強化の成果が上がり、フランスのLost Generation問題は収束傾向にある。

オーストラリアのLost Generation問題を捉えた映像[編集]

Generation Y - The Lost Generation Of Australia http://jp.youtube.com/watch?v=1z2Q1GQwsxA

  • オーストラリアのLost Generation問題は、アボリジニの子供を隔離した政策なども背景にあり、代表的な差別用語の一つであり、いろいろ複雑。Lost Generationというだけで、酒場では入店拒否をされ、ぐれて麻薬に走る若者が増加した背景があり、一朝一夕には解決しないだろう。

日本でのLost Generationという語彙の違いのポイント[編集]

  • 1990年代に、ドラッグに溺れ略奪や殺人などを繰り返すLost Generationに悩まされ、文字の読み書きを教え、労働へ導くべきだという議論が繰り返された。
  • 2000年後半になり、一部のメディアを中心に、日本でも「Lost Generation」という語が使われるようになったが、ニュアンスがかなり異なるため、海外で話をするときには十分な説明を要する。労働問題に起因している点は同様であるが、海外で「Lost Generation」といえば、殺人強盗集団のような暴力的な青年のイメージであるが、日本では必ずしも暴力的な集団を指しているわけではない。
  • 日本の「Lost Generation」は、アメリカでは「Generation Y」と呼ばれる世代である。従って、日本で言う所の「Lost Generation」は、アメリカで言う所の「Lost Generation」の曽孫世代に当たる。


先代:
ミッショナリー・ジェネレーション
1860年-1882年
アメリカ合衆国の世代
失われた世代
1883年-1899年
次代:
戦間期世代
1900年-1913年
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